親知らずの抜歯
口腔外科での身近な外来手術に「親知らずの抜歯」があります。「親知らず」は、奥歯の一番奥に生えてくる永久歯で、「第3大臼歯(だいさんだいきゅうし)」とも呼ばれています。一般的に生えてくる時期は10代後半から20代前半ですが、まれに30~40歳頃に生えてくる場合もあります。はじめから「親知らず」がない方や上下左右の4本が揃っていない方など、個人差があります。また、まっすぐに生えてくるとは限らず、斜めに生えたり、埋まったままだったりすることもあります。
「親知らず」は、必ず抜かなければならないというものではなく、痛みがない場合や周りの歯や歯列に影響がない場合は、無理に抜く必要はありません。抜歯が必要な症状としては、「歯ぐき(歯肉)の腫れや痛みを繰り返している」「頻繁に食べ物がつまる」「手前の歯や『親知らず』がむし歯になっている」「『親知らず』が他の病気の原因になっている」などが挙げられます。
抜歯がすすめられる「親知らず」
「親知らず」が完全に顎の骨の中に埋まっていて症状がない場合や、痛みもなく周りの歯や歯列に影響がない場合は抜歯の必要はありませんが、明らかに悪影響が出ている場合は抜歯をおすすめします。また、日頃から歯科健診を受けて、不具合の兆候がみられる「親知らず」を早期に発見し、適切な処置をしておくことも大切です。
抜歯がすすめられるケースには、主に以下のようなものがあります。
抜歯がすすめられるケース
- 歯ぐき(歯肉)の腫れや痛みを繰り返している
- 「親知らず」自体、または手前の歯がむし歯や歯肉炎を起こしている
- 噛み合う歯がなく、周りの歯ぐきを噛んで組織に悪影響を与えている
- 「親知らず」が顎関節症など他の病気の原因になっている
- 正常に萌出していても、きちんとブラッシングが出来ない
- 頻繁に食べ物がつまる
- 手前の歯のむし歯や歯肉炎のリスクを高めそうなとき
- 手前の歯を強く押して歯並びや噛み合わせに悪影響を与えそうなとき
以下は、必ずしも抜歯をしなくて良いケースです。
- 顎の骨の中に完全に埋まっていて、萌出力がなくなっている
- 上下とも他の歯と同じように正常に生え、歯並びや噛み合わせも問題がない
- とくに腫れや痛みがない
- 奥歯として機能している
- 将来的に移植治療(自家歯牙移植)などに利用できそうな場合
「親知らずの抜歯」は、詳しい診察が必要となります。お悩みの際はお気軽に受診ください。
抜歯後の注意点
- 抜歯後、2~3日は安静にしましょう
術後2~3日は腫れや痛みがあります。また、かさぶたになるまでは出血しやすい状態になります。アルコールや運動、長時間の入浴など血行が良くなるようなことは避け、安静にしましょう。血が止まらない場合は、清潔なガーゼやティシュなどを丸めて穴の上に置き、しっかり噛むことで圧迫止血をします。抜歯当日は少量の血が付着する程度は正常です。 - 抜歯の穴の内部は触らないようにしてください
抜いた穴の中にできるゼリー状のかさぶたを、口に水を含み転がすなどして洗い流さないようにしてください。かさぶたを汚物と思って剥がしてしまうと、治癒期間が延びたり、傷口が細菌に感染したりすることがあります。 - 腫れた時には軽く冷やす
下顎の「親知らず」を抜いた時に起こりやすいのが「腫れ」です。この腫れは軽く冷やすことで引くことがあります。頬の外側から冷却ジェルシートを貼ることも効果的です。 - 1週間以上痛みが継続するときは注意が必要です
かさぶたが綺麗に出来なかったり剥がれたりした場合は、抜いた穴がなかなか塞がらず、骨の一部分が外から見えることがあります。この状態をドライソケット(治癒不全)といい、痛み止めを飲まないと耐えられない痛みが、1週間以上続くことがあります。目安として2週間経過しても痛みの状態が改善されなければドライソケットの可能性が高いので、受診してください。